2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

川で 7

サエは源流に座り左手を水に浸けていた。 「ボワッと染みでてこ、ボワボワっと染み出てこ、直線と曲線と隙間・・・、あの木に対しての空間は地なのかとか、私も中に居る。空気は限りなく大きな物体であると、ってそうなると層(そう)なのかって、そうなのか…

川で 6

「さてさて、さてと。」とハッキリした口調で口に出したO氏は携帯電話で兄にメールをした。 [兄へ、色工場トンネル西の河原にて、かの子、石きり5段により移動。 かなり上流か? 俺は少し戻る。サエさんに確認よろしく。 -- 弟より] O氏は、携帯電話を胸ポ…

川で 5

ケーンという甲高いキジの声と同時に、かの子は再び川面に向かって石を投げた。 1段、2段、3段、4段、5段と石はスーパーボールのように水面を跳ねて、流れに飲み込まれた。 かの子は、橋の方を見上げ逆行の中に立つO氏に勢い良く手を挙げた。 O氏は頭の…

川で 4

サエは特に透明色をキレイに出すという理由で、硝子を染め付ける部門で働いていた。 O氏の兄は基礎12色見本という役職に就くほど正確な色の職人タイプだった。人から出る色はその日の体調や気分で揺らいでしまうものだが、彼は同じ色を同じように出す人間で…

川で 3

O氏は少し顔をあげて、工員たちの後ろ姿に眼をやった。 「橙、赤、紫、水色、黄緑。なんだ、まだ1年目の小僧ばかりだ。」 O氏は色工場で13歳の時から36年働いた。 O氏の左手の中指は、光の角度で色の変わる不思議な藍色がかった銀色に染まっていた。 そして…

川で 2

かの子は、川の流れから聞こえて来るはずの合図を聞き分けようとしていた。 その合図はオンオンとなく子犬の鳴き声に似ているはずだった。 しかし、その合図が聞こえたとして、同時に何をすればいいということもなかった。 ただ、合図を待ってるだけだった。…

川で 1

轟々という水の落ちる爆音の中、時々甲高い鳥の鳴き声がする。 かの子は、流れの中で洗われてすっかりスベスベに丸く薄く削られた石を水面にスライスさせるように放り投げた。 放り投げられた石は、川の流れに逆い1段は跳ねたが、跳ねた先の岩に当たって四方…

きのことなど文章

BankART sutudioで作った文章。以前に載せた分もありますが、まとめて。 - きのことなど やたら傾いた木が在る。 まるで、強い風が吹き続けてるように。 今にも、ザワザワと枝や葉が擦り合わさって音を立てそうだ。 何かしらの関係で、北に曲がって育ってし…

BankART Studioの写真

暑くて、ぼーっとしたり、ばたばたしたり、なんやかんやと、1ヶ月たって、ちょっと涼しくなってました。 ずらっと、おおまかなBankART Studioの写真を載せます。 改めて、 Studioでの制作は色々とと楽しかったなぁと思います。 ] [ ] [ ] [ ] [