川で 2

かの子は、川の流れから聞こえて来るはずの合図を聞き分けようとしていた。
その合図はオンオンとなく子犬の鳴き声に似ているはずだった。
しかし、その合図が聞こえたとして、同時に何をすればいいということもなかった。
ただ、合図を待ってるだけだった。
 
 その様子を橋の上から見ていたO氏の後ろを、5人の若者が通りすぎる。
彼らは、橋の東のトンネルを抜けた所にある色工場で働いてる工員たちだ。
彼らの左手の中指の先は、それぞれの担当の色に染まっていた。

(つづく)