川で 6

「さてさて、さてと。」とハッキリした口調で口に出したO氏は携帯電話で兄にメールをした。
[兄へ、色工場トンネル西の河原にて、かの子、石きり5段により移動。 かなり上流か? 俺は少し戻る。サエさんに確認よろしく。 -- 弟より]
O氏は、携帯電話を胸ポケットにしまい、鼻歌まじりに先ほどかの子が消えた河原まで降りて行った。
そこには、かの子の右のスニーカーが落ちていた。
O氏は鞄から川釣り用の胴長を着込むとスニーカーをビニール袋に入れて肩ひもにくくり付け、ザブザブと川の中に入って下流の方へ向かって歩きはじめた。

(つづく)