きのことなど文章

BankART sutudioで作った文章。以前に載せた分もありますが、まとめて。

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きのことなど
やたら傾いた木が在る。 まるで、強い風が吹き続けてるように。
今にも、ザワザワと枝や葉が擦り合わさって音を立てそうだ。
何かしらの関係で、北に曲がって育ってしまった。
どんどん、繋げていこう。
連鎖連鎖連鎖連鎖 リンケージ 百草千草百樹千樹 百花繚乱


ある朝早くに、キノ子は木の股から生まれた。
真っ黒な体は、白っぽい産毛で被われていた。
黄みがかった眼をして、水ばかり飲んだ。夜は立ちながら眠った。
嵐の日に、小さなキノ子は風にあおられて飛ばされそうになった。
キノ子は、モゾモゾと木のウロに入って、丸く縮こまりながら、
嵐が去るのを辛抱強く待った。
「この雨が土を奥まで湿らす。この風が死骸を運ぶ。この雷は大事な電気。」
とウロの壁からブツブツ聞こえていた。
嵐が過ぎて、キノ子がウロからでた時、キノ子に耳ができた。
キノ子は、今まで中側から聞こえてた声が外側からするので驚いた。
頭の横に穴が左右に1つづつ空いていた。
「外側から聞こえたほうが混乱は少ないし、なんだか歩きやすくなった。」とキノ子は思った。
結構な時が経ったとき、
キノ子は、かなり人間らしくなっていた。
鼻などは随分たってからできたので、
顔の真ん中に穴の開いた三角錐がなんの役に立つか理解しかねた。
実際、キノ子は光合成で呼吸をしていた。
「これは匂いだな。外から入ってくる空気は匂いがある。」
キノ子は耳が先にできたので、言葉を先に知っていることがある。
自分には理解しかねることが外の世界に満ちていると思う。
だから、頭に新しい穴が空くたびに知覚が増えるので、
もっと沢山自分に穴があけば良いと思っている。


密度がやね違うんやて 重さがなちゃうんやって
 難い(カタイ)と堅く(カタク)なるやろ
柔い(ヤワイ)と軟(ヤワ)なる ぐらぐらやぐらぐら
歯を剥いた猿が叫ぶ 爪を立てて、皮を剥ぎよる
ヤニがでて、イヤになる べっ甲ベチャベチャニチャニチャする 
油で溶かす  火で融かす そろそろと木々の間に幕を張る
木のマタから/また生まれました  実になれば/少し違うのだろうけど
木のマタだから たまたまだけど 身体も真っ黒で からす石みたい
春レンコン-夏タヌキ-秋タヌキ-冬レンコン 穴を掘るんです 
からす石は 炭なんですよ 湿度が高いと闇が深い。
濁った水の中にいる。闇が深いと何かが猛烈な勢いで育ってしまう。  
その中を青い光の点が舞う。私の身体には油の膜が張る。  
上に伸びるより下に伸びないとさ、力がいるでしょ、
柔らかい隙間を縫うのよ 水を吸うジュース 
根っこが東にしか行けないか 
ネガポジ反転したことがうらがえしだ!!  
ひっくり返ってなかなかかなかなか 
東はごめんだって、西にごめんして 常に踏ん張る力なんてなくって、
なされるがまんまの形
  または、てっぺんに重り  
または、 双葉の片方がチギレタんだ
地面から60cmあたりかな そんな辺りに したら 傾いでさ 
こんな感じに または びゅうびゅう吸い込まれてさ 常に
こんな感じに 常に風に吹かれている  吹かれてるみたい  
吹かれてるんだって 風はいつも東風 暖風がじっくりぼうぼう当たる
   胴のあたりに
芽が出て膨らんで花が咲いてあれしてこれして子供が出来て
ほっときゃ育つやろうと。
夜遅く地球の重力に引かれるままコアに向かう
真昼には太陽の引力に引かれ導かれるままに光に向かう
夢は根っこでみるもの 手近で手軽で手堅いんだもの 
だって火もつくじゃん  住むことも着ることも食うことも  
家だって人形だって 土と空気と水と光だから なんだってそうだろうか
  鳴子のなりをなすだろうか
ドコまで根を伸ばせばまっすぐ立てるのか。
  栄養は菌が取る。
天まで届くと、きっとヤバい。きっとヤバい。


途中で、膨らんで、ヤバい思たら細なるし、変なとこから、変な風に枝出るし、ちっとも思った形ならんわ。隣の杉君は真直ぐやのに。
今日かって、体に変な芋虫付きよるし、変な鳥はずっと鳴いとるし、
変な奴が自転車付けよるし、犬はオシっこしよるし、なんやねん。
あー、動き回りたいわ。こないだ、隣の杉君にそういうたら、
「それは違う」言われたけど、僕ずっと動きたいねん。
ちゃうとこ行きたいねん。そしたら、こないだ、トラック乗ったおっさんが、杉君を根っこから抜いて、トラックの荷台に積んで行ってん。
杉君、僕には、「痛い痛い」言うてたけど、トラック走り出したら、ちょっと笑ててん。
僕、ホンマに泣きたなった。
そしたら、市役所のオッサンがきて、僕に変な札付けて行ってん。
僕も札付きの悪になったんか、思ってがっかりした。
そのせいで、変なネズミに「29番みっけ」言われたわ。
そいつ、1番札付きの木の子分にやねんて。
「紹介したろか」言われたけど、
僕は子分とかはイヤやわ。
そんで、ときどき、杉君は元気かなって思うねん。