川で 8

「トントントンボワボワボワトントンボワボワ・・・」
サエは胸を叩きながら、口の中で唱えていた。ダンダンと胸の中に渦ができ体中に広がって溢れそうになる。
その溢れそうな渦のエネルギーは、左手の中指からオンオンと水に流れ出していく。
サエは、源流で、からくり人形のように、胸を、叩きながら、水に、オンオンと。
コゲラが異変を感じて飛んできてサエの右肩に乗ると耳たぶにクチバシを打ち付ける。
「はやい、はやい、うしなう、うしなう。」
耳たぶから水面に滴り落ちた血をみて、サエは胸を叩くのを止め、
「ふう、やばいとこやばいとこ。・・・ありがとう。」
コゲラの頭を人差し指で撫でてお礼を言う。

(つづく)