「9個目のぼっち」

「9個目のぼっち」
ある日、「地面をドンドン掘っていったら、どこぞの国に着くらしいよ。」とオケラが言った。
「だったら掘ってみなよ。」と言ったら、「オーライ、分かった、君が言うなら掘ってやるよ。」と地面に直径1.5㎝の穴を真直ぐ掘り出した。
30秒も立たないうちに、オケラの姿は見えなくなった。
僕は、『アホやな、地球が丸いからブラジル辺りに着くって分けないじゃん、マグマとかの前に数メートルで水が湧いて、その先は掘れないってば。』と思って、その場を立ち去ってしまった。
1時間後、オケラが家を訪ねてきた。
「ひどいよ。君が待ってると思って、向こうの国からトンボ帰りで戻ってきたのに、待てってくんないんだもの!!」と泣きながら怒っていた。
僕は、すっかり忘れていて、なんのことかも分からなかったが、とっさに「ごめん、学校に宿題を忘れてて、取りに行ってたんだ。」と嘘の言い分けしながら、『あぁ、穴掘らしてたっけか・・・。』と思った。
すると、オケラは「・・・ホントはさ、穴が貫通したらさ、やたらキラキラした青い花畑でさ。んで、穴の側の花を掴んで、地面に上がろうとした瞬間に、花がちぎれてさ、穴の淵が崩れちゃってさ、すごい勢いで穴の中を落ちて戻って来ちゃったんだけどさ・・・、スゴい怖かったんだ。こっちの穴の口からは、ポーンて1メートルくらい飛び出ちゃったしさ・・・。」
僕は信じてなかったけど、オケラは敵に回したくないタイプの性格だったから、「ごめんね、僕が待ってたら、受け止めれたのに、ホントにごめんね。」と言った。
すると、吃逆を上げながら、オケラは「・・・それでさ、なんて国か分からなかったんだけど、お土産に、この花あげるよ。」と青く光った薔薇のような花を僕に差し出した。
僕は花を受け取りながら、「ありがとう。すごく奇麗な花だね。今度、僕も連れてってよ。」と言った。
「ヤダヤダ、落ちてきたの本当に怖かったんだから・・・。それに、君は、穴掘れないじゃん。・・・あぁ、僕、もう、今日は疲れたから帰るよ。」と言って、オケラはまた穴を掘って帰っていった。
僕は穴に向かって、「またね。」と言った。
僕も部屋に戻って、もらった花を、コップの水に挿してやった。
花は「あっ」と小さい声をあげると、花びらが黄色くなって、水が赤くなった。
『えっ?』と思ってるうちに、花は赤い水を飲み干してしまうと、小さく丸くなってしまい、コップの底に銀色の種みたいなのが残った。
その種みたいなのは、僕の机の棚に置いてある。
オケラが掘ったあの穴は、いつも青く光ってる。