かわで(つづき)

 大粒の雨が水面を叩き付ける。三角の波頭にボツボツと穴を空け続ける。しかし、その波頭も次々に壊れる。そして、同時に次々と現れる。岩を被い、中で渦を巻く。でも、それは吸い込まれる。いつか吸い込まれる。木々がビュウビュウと鳴る。どこかでガンガンとかゴロゴロという音もする。
 カノ子は上流の頑丈そうな岩の上に腰をかけて、その様子を眺める。逆巻く川の流れを形で捉えることができない。
ここでも、カノ子は合図を待つ。石切は出来ない。ホウホウと声を出しても嵐にかき消されて聞こえない。カノ子は岩のクボミの水に手を浸している。
黒い髪はビッタリと髪のように額や頬に張り付き、実際、衣服は雨を含みすぎて、冷たく重い。遠目から見れば、逃げ遅れた鹿か、山姥の子供にでも見えるんじゃないかしら。
あれ?生温い。と思って、指先を見ると水が少し赤くなる。ん?サエかな?と思って、ちょっとだけ、気持ちがザワつく。でも、直ぐに、元の冷たい水になる。あぁ、大丈夫そうだ。でも、もう少しここにいなくっちゃ。カノ子は薄ぼんやり光る。