「11個目のぼっち」

「11個目のぼっち」
たぶん、この調子で上り続ければ、暗くなる前に4度目の休憩場に着くはずである。
あの男の言った通り3日置きに休憩場がある。
上り始めて1時間くらいの時が1番怖かった。
まだ、地上の景色がよく見えたから。
飼犬のジュンが下から「おいおい、やめとけって〜」と吠える声が聞こえてきたし、いつも乗る電車の踏切が、混雑している様子も見えたし、それに、僕の大事な鞄を、あの背の高い男が首に掛けながら、「これ、貰っとくよ」と、こちらにVサインを出したのも見えた。
とても気になったけど、戻らなかったのは、1歩でも階段を下りれば、周りの景色に、引きずり降ろされる気がきがしたからである。
僕は大きな声で歌を歌い、自分の声で耳を塞ぎ、歌をより巧く歌う努力をすることに意識を集中させ、周りの景色を消して、無意識の振りをして、足を交互に段に押し上げて行った。
そうして上り続けていたら、耳元で「すいません、もう暗くなるので、お静かに・・・」と言われた。ビックリして顔を上げると、1羽のムクドリが会釈をして通り過ぎて行った。
我にかえって、周りを見渡すと、空はオレンジから紺色のグラデーションになっていて、太陽が金色の光を放ち、遠くの山並みに落ちて行く。
僕は、涙を流しながら、階段を上り続けた。

太陽が沈んだら、星がたくさん出たけれど、月が細くて、足下が全く見えないくらい暗い夜になった。
壁に手を沿わせながら、少し上っていたら、手に小さいボッチが当たったので摘んでみた。小さな明かりが点いて、そこらはちょっとした踊り場になっていた。明かりの下に、紐のついた毛布があり、それに包まって眠ることが出来た。
2日目は、何度か鳥が会釈しながら通り過ぎたけど、鼻歌まじりで、順調に進んだ。
3日目の夜、壁に取手が在ったので、回したら、塔の内側に小部屋が在り、青いベットと机の上に食べ物が置いてあった。
部屋の中に入ると、机の上に小さい賢そうな猿がいて、僕に手を洗うように促した。
水道をひねったら、水が出て、そんなの当たり前なのに、僕はまた泣いてしまった。
猿が、僕の肩に乗って、頭を撫でてくれた。そして、スープを温めたり、ベットの横で、僕の上着にボタンを1つ付けてくれたりした。

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 ◎12月は、あっという間に終わってしまいそうです。少し風邪気味です。治りかけです。大丈夫です。
2008年は、かなり沢山のことがあった気がするんだけど、うまく思い出せません。
本当に色んな人に、お世話になりっぱなしです。ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。
来年は、どうなることやら。がんばろうと思ってます。
3月のゲイサイに兄が出すのにつられて、私も出すことにしてみました。
では、皆様、良いお年を!!