《パノラマとパラレルワールド-5》

《パノラマとパラレルワールド-5》
閏年が3回あったから、3653人目やろ」と、羽田が紺と墨の縦縞の着流し姿で再登場。「昨日来た、まさみは火星に住んでるとか言うてたし、その前のまさみは、ズーと何か食ってた。最も、俺の知ってたS子はもっと素朴な奴やったけどね」と言いながら、羽田はまさみの横に座った。「そうね、閏年が3回あったわね。最初のまさみがここに来たのは10年前の夕方だったわ。私は、寝室にカーディガンを取りに行ったの。そしたら、ベットに女の子が寝てたのよ。誰? って思うのと同時に、なんだか懐かしくて、側で起きるのを待ったの。しばらくしてね、そのまさみが目を覚ましたわ。とても綺麗な赤い目をしていてね。私を見て、何か言おうとしたんだけど、次の瞬間にはパラパラって居なくなったわ。起きてるのに夢を見たのかしら? って思ったわ。でも、それから毎日、その女の子らしい人が来るのよ。現れる時間や滞在時間は1日の内でマチマチで、姿や言うことがドコか違うのよ。でも、そのうちに、まさみって名前なんだとか、あたしの事がS子だって分かってるみたいだ、とかは共通してるって分かったの。そしてね、私は、毎日、そういうまさみの相手をしてたんだけど、だんだんと、私が待ってるまさみじゃないなぁって思うようになったの。それでね、たぶん、あなたが、私の待ってたまさみだと思うんだ」と本当にうれしそうにS子は微笑んだ。


絵は、「海に雨が降る」です。